試験研究の成果
 これまでに取り組んだ気候変動に適応した農業技術に関連する試験研究の成果を紹介します。
 その内容に基づき、 に区分しており、それぞれに、「作物(水稲・麦類・大豆)」、「園芸作物(野菜・花き・果樹)」、「畜産(家畜・飼料作物)」、「土壌肥料」等の分野ごとに整理しています。

 タイトルをクリックすると、試験研究の成果の詳細を見ることができます。
なお、背景色の濃い成果については、今年度に新たに公表した成果です。

 これらの試験研究の成果は、「普及に移す技術」等として公表することで、現地への社会実装を加速させる取り組みを行っておりいます。

1 気候変動影響把握
 気候変動による農作物への影響等に関する試験研究成果です。
作物(水稲・麦類・大豆)
令和5年産水稲種子の発芽の特徴New!
 令和5年産の「ひとめぼれ」では発芽試験4日後の発芽率と14日後の発芽率が平年値よりも下回りました。「ササニシキ」は4日後の発芽率は前年より劣るが、14日後の発芽率は前年並でした。
 これらのことが、令和5年産水稲種子は休眠が深まり高温年産種子の特徴として確認されました。
古川農業試験場 作物栽培部

2 気候変動緩和技術
 温暖化の原因となる二酸化炭素など温室効果ガスの排出削減等、気候変動の緩和につながる技術についての試験研究成果です。
園芸作物(野菜・花き・果樹)
イチゴの培地加温に利用可能な木質バイオマスボイラーNew!
   イチゴ高設養液栽培において、ウッドボイラーS-220NSBを利用し、15℃設定で培地加温した場合、慣行体系(灯油ボイラー)と比較するとイチゴの1作における10a当たり燃料合計金額を78.5%に抑えることができ、10a当たりCO排出量も慣行の33.2%に抑えることができます。
農業・園芸総合研究所 野菜部
園芸ハウス内のCO濃度多点計測とリアルタイム可視化ツール
 昨今の施設園芸では、光合成促進を目的とした炭酸ガス施用技術の普及が進んでいますが、COは可視化しにくいため、栽培者に効果的な利用法や換気の有無が施用効果に及ぼす影響等を指導することが困難になっています。
 そこで、園芸ハウス内で炭酸ガス施用した際のCO濃度の変化を直感的に把握する手法とそのためのツールを開発しました。
農業・園芸総合研究所 野菜部
換気時に効果が期待できるダクトによるCO施用法New!
  昨今の施設園芸では光合成促進を目的としたCO施用の普及が進んでおり、生産性を飛躍的に向上させていますが、この技術は温室効果ガスの排出量を増大させるため、持続可能な開発目標の実現には効果的な利用が求められます。
 そこで、現在行われているダクトを利用したCO施用法の効果を検証しました。
農業・園芸総合研究所 野菜部

土壌肥料
混合堆肥複合肥料の試作と肥効等の検討
 家畜ふん尿由来堆肥の利用促進のため、広く利用希望者のニーズに合う、取り扱いやすい機能性を有した堆肥の試作とその肥効等の調査研究を実施しました。
畜産試験場 草地飼料部、古川農業試験場 作物環境部、農業・園芸総合研究所 園芸環境部
メタン発酵消化液の作物栽培への利用
 宮城県内の食品廃棄物等を原料とするメタン発酵施設で産生される消化液について、水稲栽培における施肥コスト低減や追肥労力軽減手段の一つとしての活用を検討してきました。
 これに加えて、園芸作物での活用方法を検討しました。 
古川農業試験場 作物環境部、農業・園芸総合研究所 園芸環境部

3 気候変動適応技術
 もう起こっている、また、これから起こる気候変動(温暖化)が農業生産に及ぼす影響を回避・軽減し、農業生産を維持・向上させるための適応策についての試験研究成果です。
園芸作物(野菜・花き・果樹)
イチゴのクラウン温度制御を用いた作期拡大と増収技術
 クラウン(株元)に沿わせたチューブに冷水や温水を流し、冷却または加温を行うことで、クラウン部を20℃前後に維持します。
 定植から10月上旬の冷却処理は、第1次腋花房の分化を促進し、11月から2月の加温処理は、草高の維持や展葉を促進し、3月以降の冷却処理は、果実の肥大を促進します。
農業・園芸総合研究所 野菜部
大規模施設における促成イチゴ栽培のIPM体系
 地球温暖化など気候変動により、病害虫の国内侵入リスクや分布域・発生域の拡大などを受け、病害虫が発生しづらい生産条件の整備、環境への負荷を低減し病害虫の発生を抑える「総合的病害虫・雑草管理(Integrated Pest Management:IPM)」の普及をこれまで以上に進める必要があります。
 定植苗の高濃度炭酸ガス処理による微小害虫防除、UV-B照射によるうどんこ病防除、天敵製剤によるハダニ類防除等を活用することで、イチゴの施設栽培における化学合成農薬の使用を低減させ、総合的病害虫管理技術を導入することにより、長期間にわたって害虫の発生を抑制することができます。
農業・園芸総合研究所 園芸環境部
大麦リビングマルチを利用したキャベツ等のIPM体系
 地球温暖化など気候変動により、病害虫の国内侵入リスクや分布域・発生域の拡大などを受け、病害虫が発生しづらい生産条件の整備、環境への負荷を低減し病害虫の発生を抑える「総合的病害虫・雑草管理(Integrated Pest Management:IPM)」の普及をこれまで以上に進める必要があります。
 キャベツにおいて、大麦をリビングマルチとして導入することにより、モンシロチョウ(アオムシ)、アブラムシ類、ネギアザミウマに対して高い密度抑制効果を示します。
 タマネギにおいて、大麦をリビングマルチとして導入することにより、主要害虫であるネギアザミウマに対し、高い密度抑制効果を示します。
農業・園芸総合研究所 園芸環境部
キャベツ「初恋」の9月上旬定植秋冬どり栽培New!
  夏まき秋冬どりキャベツにおいて、従来の定植時期より遅くしても年内の収穫が可能となる品種を検索したところ、夏秋期の高温、暖冬に対して安定的に栽培が可能な品種と定植晩限を明らかにしました。
農業・園芸総合研究所 野菜部
ちぢみゆきな栽培に適する品種と播種晩限の目安
 宮城県において、ゆきなは「みやぎ園芸特産振興戦略プラン」の地域戦略品目に位置付けられています。中でも、冬の寒さに当たることで葉の縮みや甘さが増したちぢみゆきなは冬の人気商材ですが、近年は温暖化の影響で暖冬傾向にあることから、ほ場で生産物が出荷規格を大きく超えることが多く、収穫作業効率の低下や調製時の労力および廃棄物の増加が課題となっています。
 その解決方法として、露地栽培における適品種と、播種から収穫までに要した有効積算温度をもとにした播種晩限のシミュレーションを作成しました。
農業・園芸総合研究所 野菜部
ちぢみホウレンソウ栽培における播種適期の目安New!
  ちぢみホウレンソウ「寒味・極」と「雪美菜02」で、播種から収穫までの有効積算温度をもとにしたシミュレーションの結果、県内の播種適期の目安は内陸部で9月上中旬、沿岸部で9月中下旬であると推定されました。
農業・園芸総合研究所 野菜部
果菜類における総合的作物管理を目指した総合的病害管理技術の開発
 果菜類において、総合的作物管理技術(ICM)も視野に入れ、総合的病害虫管理技術(IPM)に関する個々の技術を開発し、園芸作物の特産産地で求められている効果的かつ効率的な防除体系を確立しました。
農業・園芸総合研究所 園芸環境部
極早生品種を用いたエダマメ二期作を可能とする播種日New!
  エダマメの極早生品種を用いて4月中旬と、7月下旬から8月上旬に播種することで二期作が可能です。
 これによりそれぞれ7月中旬から下旬と、9月下旬から10月中旬に収穫を行うことができ、8月の供給が多いエダマメの出荷にかかる調整作業の集中を回避することが期待されます。
農業・園芸総合研究所 野菜部
夏秋ギクのセルトレイ育苗期における定植前摘心New!
   夏秋ギクの栽培は8月盆及び9月彼岸が需要期となり、多くが露地で栽培されています。そのため、ほ場への定植後に行う摘心作業は、天候に左右されるとともに、ほ場を屈んで移動しながら行うため身体的負担が大きくなっています。セルトレイ育苗期に摘心できれば、ほ場を移動しながら行っていた摘心作業が作業台の上で実施できるため軽労化が可能となりますが、育苗期に摘心しても仕立本数や切り花品質が確保できるかどうか不明でした。そこで、セルトレイ育苗期に摘心した場合の仕立本数や切り花品質への影響を確認しました。
農業・園芸総合研究所 花き・果樹部
赤色LEDランプを用いた露地電照栽培に適する夏秋ギク品種New!
   耐候性赤色LEDランプを用いた露地電照栽培が可能で、切り花品質に優れ、高温耐性を有する新たな品種は、8月盆出荷作型では、小ギク「精しはく」、「精なつか」、スプレーギク「マキシム」、輪ギク「精の奏」の4品種、9月彼岸出荷作型では、スプレーギク「シューフェアリー」、「シューオレンジフェアリー」、輪ギク「花鏡」、「寄のだるま」、「精の奏」の5品種でした。
農業・園芸総合研究所 花き・果樹部
増収技術と省力栽培技術を導入したシャインマスカットの栽培体系
 近年、温暖化の影響により黒色系品種のブドウ(巨峰など)では着色不良が大きな問題となっているため、着色不良の心配が無い黄緑色系品種が注目されており、特に「シャインマスカット」は人気が高く、栽培が増加しているため、果実品質に影響しない省力化技術(花穂整形器の利用、1新梢2房利用、副穂・支梗の利用、果粒軟化期以降の新梢管理の省略)の組合せにより、作業時間を短縮し、収益性の向上を図ります。
農業・園芸総合研究所 花き・果樹部
高温期のハウス内における作業者の効果的暑熱軽減対策
 高温期のハウス内作業は過酷な暑熱環境下で行われています。
 ハウス内での高温作業時の熱中症リスク対策として、ファン付き作業着(商品名:空調服)と移動式小型ファン等の利用が有効です。
 しかし、盛夏等の高温時には送風の冷涼感が得られにくいことがあります。
 そこで、細霧冷房でハウス内気温を下げ、ネッククーラーを追加して冷涼感を確保することによる暑熱軽減効果や、さらにフード付き空調服の有効性を明らかにしました。
農業・園芸総合研究所 野菜部

 宮城県農業・園芸総合研究所
  (企画調整部 企画調整チーム)
  〒981-1243 宮城県名取市高舘川上字東金剛寺1
  TEL:022-383-8118
トップへ