試験研究の成果

【みやぎ環境税活用事業】
クモヘリカメムシに対する水田雑草ノビエの影響

分  野
作物
品  目
水稲
技術概要
 宮城県の斑点米カメムシ類の重要種はアカスジカスミカメですが、近年クモヘリカメムシの発生が増加傾向にあり、また分布域を県北部まで拡大していることから、クモヘリカメムシの防除に対する重要性が高まっています。
水田雑草のノビエが発生する水田において、クモヘリカメムシの発生が助長されることは知られていますが(写真1)、クモヘリカメムシの発生量に対してノビエの影響を定量的に示した研究は多くありません。
 そこで、生産現場においてクモヘリカメムシとノビエの定量的な調査を行い、両者の関係について明らかにしました。
 
写真1 クモヘリカメムシ成虫(体長:約16mm)
                  ※右:ノビエに寄生するクモヘリカメムシ


  1. 8月上旬~下旬のクモヘリカメムシの発生密度に対してノビエの発生密度が影響し、水田内にノビエが発生することによりクモヘリカメムシの発生密度が高くなります(図1、表1)。特に、幼虫の発生密度に対して強い相関を示します。
     
    図1 水田内におけるクモヘリカメムシとノビエの関係(令和4~6年)
     注1)すくい取り虫数:8月上旬・中旬・下旬に行ったクモヘリカメムシのすくい取り調査(20回振)の合計値
     注2)ノビエ発生密度:8月中旬におけるmあたりの株数



    表1 クモヘリカメムシとノビエの相関関係(令和4~6年)
     A クモヘリカメムシ(成虫+幼虫)とノビエの発生密度の関係
    相関係数
    クモヘリカメムシ
    8月上旬
    クモヘリカメムシ
    8月中旬
    クモヘリカメムシ
    8月下旬
    クモヘリカメムシ
    8月上~下旬
    ノビエ発生密度 7月中旬 0.838 0.772 0.885 0.846
    8月上旬 0.907 0.866 0.887 0.906
    8月中旬 0.949 0.927 0.902 0.949
    8月上~中旬 0.929 0.897 0.896 0.929
     B クモヘリカメムシ(幼虫)とノビエ発生密度の関係
    相関係数
    クモヘリカメムシ
    8月上旬
    クモヘリカメムシ
    8月中旬
    クモヘリカメムシ
    8月下旬
    クモヘリカメムシ
    8月上~下旬
    ノビエ発生密度 7月中旬 0.842 0.623 0.882 0.862
    8月上旬 0.901 0.784 0.882 0.924
    8月中旬 0.942 0.850 0.894 0.961
    8月上~中旬 0.923 0.817 0.890 0.944

  2. クモヘリカメムシの多発生ほ場において、7月中旬~8月上旬に本種の越冬世代成虫が侵入し、幼虫の発生密度は8月上旬以降、高密度で推移します。また、8月中旬に第1世代成虫の発生密度が高くなります(図2)。
  3. クモヘリカメムシの中発生ほ場において、本種の越冬世代成虫の発生は少ないですが、8月上旬以降に幼虫の発生が認められ、8月下旬に発生密度が高くなります(図2)。

    図2 クモヘリカメムシの発生状況(令和4~6年)
     注1)すくい取り虫数:7月中旬~8月下旬に実施したすくい取り調査(20回振)における
                調査時期ごとのすくい取り虫数の平均値。
     注2)ほ場の分類:すくい取り調査における調査時期ごとの合計値により以下のとおり分類した(調査ほ場のうち1ほ場は0頭))
              多発生ほ場:106~407頭、中発生ほ場:14~39頭、少発生ほ場:2~9頭
     注3)調査時期:7月中旬:7/19~20、8月上旬:8/2~3、8月中旬:8/15~17、8月下旬:8/27~31



※利用上の留意点
  1. 水田雑草のノビエが発生した場合、クモヘリカメムシの発生に留意し、穂揃期とその約7日後の2回、殺虫剤による基本防除を実施します。2回散布により十分な防除効果が得られないような多発条件の場合は、追加防除を検討してください。
  2. 水田雑草のノビエはクモヘリカメムシの多発要因となることから、残草しないように適切な雑草管理に努めてください。
  3. クモヘリカメムシの成虫は針葉樹林などで越冬し、水田内に侵入した後に1世代経過します。ノビエが多発した水田内において、8月上~中旬に第1世代成虫の発生密度が高くなり、8月下旬に第2世代幼虫の発生リスクが高くなります。
  4. 調査ほ場におけるクモヘリカメムシの発生程度について、7月中旬~8月下旬に4回実施した20回振りすくい取り虫数の合計値を用いて、下記の基準により分類しました。
     多発生:100頭以上、中発生:10~99頭、少発生:10頭未満
  5. 調査ほ場は県南部の現地ほ場であり、斑点米カメムシ類を対象にした水稲出穂期以降の殺虫剤散布は行っていない条件下で調査を行いました。また、水田雑草に対する除草剤散布は、生産者の慣行防除により実施しています。
関連情報
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担当部署
古川農業試験場 作物環境部(電話:0229-26-5107)

 宮城県農業・園芸総合研究所
  (企画調整部 企画調整チーム)
  〒981-1243 宮城県名取市高舘川上字東金剛寺1
  TEL:022-383-8118
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