実施中の試験研究
 現在、農業・園芸総合研究所、古川農業試験場、畜産試験場で取り組んでいる気候変動に適応した農業技術の試験研究の内容を紹介します。
 その内容に基づき、 に区分しており、それぞれに、「作物(水稲・麦類・大豆)」、「園芸作物(野菜・花き・果樹)」、「畜産(家畜・飼料作物)」、「土壌肥料」等の分野ごとに整理しています。

 各実施中の試験研究名をクリックすると、各実施中の試験研究の詳細を見ることができます。
なお、背景色の濃い試験研究については、今年度から取り組んでいる課題です。

 宮城県では、試験研究機関が新たな技術開発を通じ、食と農に関する他の計画等とも相互に連携を図りつつ本県農業の振興を推進するため、令和3年度から令和12年度までの10か年で重点的に取り組む「第9次農業試験研究推進構想」を令和3年3月に策定しています。
 この構想においては、「Ⅲ 持続可能な農業生産環境の構築に向けた研究」を主要目標の1つに掲げ、「1 農業生産環境の維持・向上のための技術の確立」「2 気候変動や異常気象に適応した生産管理技術の確立」「3 地域資源を活用した農村の活性化支援手法の確立」に取り組んでいます。

 特に「気象変動や異常気象に適応した生産管理技術の確立」に関しては、近年、記録的な高温や低温、豪雨、暴風などの災害を引き起こす大規模な異常気象が頻発する傾向にあり、気候変動や異常気象に適応する技術開発が求められてるため、「みやぎ環境税」を活用しながら、気候変動にも耐え得る品種、品目や作型、栽培・飼養管理技術などを開発するとともに、温暖化の進行が予測される本県の農業生産環境において、これに対応できる栽培・作業技術の確立を目指していきます。

1 みやぎ環境税活用事業
 宮城県では、「みやぎ環境税」を活用した取組や事業内容については、令和3年2月に令和3年度~令和7年度までの5年間の取組内容を定めた「新みやぎグリーン戦略プラン」を策定しております。
 このプランに基づき、令和6年度は全59事業(市町村交付金事業を含む)に取り組む計画であり、農業関係試験研究機関でも以下の試験研究に取り組んでいます。
作物(水稲・麦類・大豆)
温暖化に適応した高温に強いイネづくりの開発普及推進事業(R3~R7)
 近年、夏期高温により水稲の玄米品質が低下しています。一方、幼穂形成期間である7月の低温も度々遭遇しており、依然として障害型冷害の懸念があります。
 このことから、高温登熟性と耐冷性に優れた系統の普及対象地域における収量性や品質を評価します。
古川農業試験場 作物育種部
地球温暖化に対応した作物病害虫管理技術の構築事業(R3~R7)
 地球温暖化等の気候変動に伴い、水稲等の作物病害虫の多発や生息域の拡大等が認められ、これまでに県内では問題にならなかった病害虫の被害拡大が懸念されます。
 一方、有機農業や特別栽培など、化学合成農薬の使用を少なくした病害虫防除法が求められていいます。
 そこで、温暖化の条件でも品質・収量が低下しない作物病害の防除技術を開発するとともに、温暖化の進行により、多発が懸念される害虫のリスク評価と管理技術を確立します。
古川農業試験場 作物環境部
バイオ炭の農産物(大豆)生育への影響と物理性の検証(R5~R7)
 炭素貯留効果を有する「もみ殻」由来のバイオ炭の活用・普及に向けて、バイオ炭の農作物(大豆)への影響評価や暗きょ疎水材としての有効性について検討を行います。
古川農業試験場 作物環境部、水田営農部

園芸作物(野菜・花き・果樹)
主要露地野菜生産に関する気候変動適応技術開発事業(R3~R7)
 近年の気候変動、特に夏季高温と秋季温暖傾向によって、県内では従来の気候に合わせた露地野菜生産の作期が現状の気候と合わなくなってきています。
 県内野菜生産量の向上のために、現状の気候条件に適応する新しい作型、品種、栽培方法等について検討します。
農業・園芸総合研究所 野菜部
木質バイオマス暖房機の施設園芸分野への利用促進事業(R3~R7)Up!
 宮城県では、二酸化炭素吸収量を可視化したクレジットの市場取引(森林吸収オフセット)に取り組み、企業や団体等社会全体で森林整備を支える体制づくりを推進しており、木質バイオマス暖房機の利用促進は、CO2排出量の削減及び森林資源の有効活用が図られます。
 そこで、間伐材の薪等の未利用資源を使用した木質バイオマス暖房機の施設園芸分野への利用について検討します。
農業・園芸総合研究所 野菜部
キク類栽培における気候変動への適応推進事業(R3~R7)
 近年の温暖化の影響で、キク類の8月や9月の需要期への計画出荷が困難になってきています。
 このため、キク類選抜品種の露地及び施設栽培において、赤色LEDを用いた電照栽培を行う場合の地域別の需要期出荷が可能な栽培条件(消灯日等)を明らかにします。
 また、キク類の適品種を選抜します。
 さらに、キク類の高温障害の発生条件を解明するとともに、その対策についても検討します。
 これらのことにより、キク類の8月盆及び9月彼岸の需要期における安定生産・出荷をめざします。
農業・園芸総合研究所 花き・果樹部
果樹の凍霜害軽減技術の開発(R4~R6)
 近年の気候温暖化により生育が前進化しているリンゴ、ナシの凍霜害被害を軽減するため、生産者が取組みやすい防霜資材の効果を確認するとともに、併せて多目的防災網の被害軽減効果について検証を行い、被害軽減技術を確立します。
農業・園芸総合研究所 花き・果樹部
LEDを用いたブドウ及びリンゴの着色促進効果の検証事業(R3~R7)
 近年、県内産ブドウやリンゴ等に発生している高温による着色不良を回避し、果樹経営の安定と果樹産地の発展に貢献するため、LEDを用いたブドウ及びリンゴの着色促進技術を開発します。
農業・園芸総合研究所 花き・果樹部

畜産(家畜・飼料作物)
気象変動に対応した飼料作物の栽培(R5~R7)
 高温、豪雨等の気象変動に対応した飼料作物の栽培を図るため、強害雑草の防除技術や、牧草の播種時期が遅延した場合の栽培体系について、検討を行います。
畜産試験場 草地飼料部

2 「気象変動や異常気象に適応した生産管理技術の確立」関連課題
 「みやぎ環境税」を活用した実施中の試験研究以外にも、「気象変動や異常気象に適応した生産管理技術の確立」に向けた実施中の試験研究として、以下の試験研究に取り組んでいます。
作物(水稲・麦類・大豆)
気候変動に対応した「高品質宮城米」安定生産を図るための栽培方法の確立(R4~R8)
 主力品種である「ひとめぼれ」、「ササニシキ」を対象に、気象変動等の様々な条件下でも高品質安定生産可能な栽培方法と栽培支援方法を検討し栽培技術を確立します。
古川農業試験場 作物栽培部

園芸作物(野菜・花き・果樹)
遺伝子診断技術等を活用した病害虫の診断と防除への応用(R5~R9)
 既存の遺伝子診断技術を活用して普及センター等からの診断依頼へ対応し、対策を指導するとともに、今後発生する可能性があるウイルス病等についての診断技術を確立します。
 また、新規発生病害虫や難防除病害虫等について、発生状況の把握や動向を明らかにし、効果的な防除方法を検討します。
農業・園芸総合研究所 園芸環境部、野菜部
環境負荷低減に向けた果菜類の栽培実証(R6~R8)
 エネルギー使用量の削減と脱炭素社会の実現に向け、グローパイプを活用した局所加温技術や保温資材の活用による燃料削減、高温期の外気導入技術やホルモン剤の利用による着果安定等による夏越し栽培技術の確立に向けた実証試験を行います。
農業・園芸総合研究所 野菜部

3 産業廃棄物税基金充当事業
 さらには、施設園芸における化石燃料の使用量及び二酸化炭素の排出量の削減や、環境負荷の軽減のため、他の産業で発生する未利用資源等を生産資材として有効活用し、堆肥化や培地、土壌改良資材としての活用技術を開発するとともに、有機質肥料の効果的な施用法を検討するなど、環境に配慮した農畜産物の生産管理に向けた技術の開発に向け、「産業廃棄物税」を活用して、以下の試験研究にも取り組んでいます。
作物(水稲・麦類・大豆)
水稲育苗培土への堆肥利用による苗立ち枯れ性病害低減に関する研究(R2~R6)
 近年有機物を混用した水稲用育苗培土や有機土壌の水稲育苗用培土への混用による、育苗時に発生する病害を抑制する技術が開発されつつあります(富山県、東北大)。
 これらの技術は農薬を使用しない手法であり、これらの技術を基に育苗培土への堆厩肥混用で病害が制御できれば、育苗時に使用する農薬成分数を1~2成分節約できる可能性があり、かつ未利用堆厩肥の利用促進にも繋がります。
 このため、県内の堆肥センターで産出される各種堆厩肥を育苗培土へ混合し、その病害防除効果を確認することで未利用堆厩肥の利用推進に役立てます。
古川農業試験場 作物環境部

園芸作物(野菜・花き・果樹)
きのこ廃菌床を利用した野菜栽培資材の開発(R2~R7)
 きのこ生産で大量に発生する産業廃棄物「廃菌床」を有効活用するため、堆肥化や熱処理を行い、野菜の養液栽培用有機質培地等としての利用を検討します。
農業・園芸総合研究所 野菜部
コーヒー粕を利用した果樹栽培における土壌改良方法及びマルチングによる雑草等抑制効果の検討(R3~R7)
 モモ、イチジクの改植で問題となっている連作障害症状抑制のため、動植物性残渣のコーヒー粕を用いた土壌改良方法について検討するとともにマルチングによるの雑草抑制効果及びひこばえ発生抑制効果を検討します。
農業・園芸総合研究所 花き・果樹部

土壌肥料
堆肥の利用拡大に向けた「特殊肥料等入り指定混合肥料」の製造及び利用方法の検討(R4~R6)
 令和2年度の肥料制度見直しで新設された「特殊肥料等入り指定混合肥料」についての試作や散布時の作業性向上に向けた加工法等の検討を行うとともに、水稲や園芸作物など耕種部門と連携した肥効などの検討を実施し、家畜ふん尿の有効活用技術の開発に取り組みます。
畜産試験場 草地飼料部、古川農業試験場 作物環境部、農業・園芸総合研究所 園芸環境部
農地における汚泥肥料の施用基準設定事業(R5~R7)
 各種汚泥肥料について、成分分析やポット試験により基本的な肥料効果を把握するとともに、乾燥汚泥を用いた水稲および野菜、花きの栽培試験や、重金属の蓄積動向を調査することで、水田および畑地における汚泥肥料の種類に応じた効果的な施用方法を確立します。
古川農業試験場 作物環境部、農業・園芸総合研究所 園芸環境部

 宮城県農業・園芸総合研究所
  (企画調整部 企画調整チーム)
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