試験研究の成果

夏秋ギクのセルトレイ育苗期における定植前摘心

分  野
花き
品  目
夏秋ギク
技術概要
 夏秋ギクの栽培は8月盆及び9月彼岸が需要期となり、多くが露地で栽培されています。そのため、ほ場への定植後に行う摘心作業は、天候に左右されるとともに、ほ場を屈んで移動しながら行うため身体的負担が大きくなっています。セルトレイ育苗期に摘心できれば、ほ場を移動しながら行っていた摘心作業が作業台の上で実施できるため軽労化が可能となりますが、育苗期に摘心しても仕立本数や切り花品質が確保できるかどうか不明でした。
 そこで、セルトレイ育苗期に摘心した場合の仕立本数や切り花品質への影響を確認しました。

  1. セルトレイで育苗した苗を定植当日に摘心する場合は、定植1週間後に摘心した場合と同等の側枝が発生し、慣行と同等の切り花本数と切り花品質を確保できます(表1、表3、表4、表5、図1)。

  2. 定植1週間前の摘心は整枝前側枝数が少ないため、ほ場での整枝本数が少なくなるメリットはありますが、生育の劣る側枝が残り、品種によって下位等級が発生しやすいデメリットがあり、仕立本数が確保できなくなる場合があります(表1、表2、図1)。

 表1 摘心作業の違いによる整枝前側枝数(令和5年) (単位:本)
試験区 精こまき 精はなこ 精しらあや 精きくゆう セイスピカ セイパレット セイマオン
箱摘心A 3.9 a 7.4 a 7.3 a 3.8 ab 6.9 a 4.2 a 4.5 a
箱摘心B 3.5 b 4.4 b 3.4 b 3.5 b 3.6 b 2.3 b 4.7 a
慣行 4.9 a 7.3 a 6.3 a 4.9 a 7.7 a 4.3 a 4.9 a
※異なる英小文字間は5%の水準で有意差あり(Tukey法)
※小ギクは摘心23日後、スプレーギクは摘心15日後に調査

 表2 摘心作業の違いによる整枝後の仕立本数(3本)確保株率(令和5年) (単位:%)
試験区 精こまき 精はなこ 精しらあや 精きくゆう セイスピカ セイパレット セイマオン
箱摘心A 100 a 100 a 100 a 90 a 100 a 80 a 100 a
箱摘心B 85 a 86 a 80 a 95 a 95 a 5 b 85 a
慣行 95 a 100 a 95 a 90 a 98 a 85 a 100 a
※異なる英小文字間は5%の水準で有意差あり(Tukey法、確保株率についてはアークサイン変換後に検定)

 表3 摘心作業の違いによる小ギクの消灯日側枝長(令和5年)
試験区 精こまき
(消灯日6/9)
精はなこ
(消灯日6/9)
精はなこ
(消灯日6/16)
精しらあや
(消灯日6/9)
精しらあや
(消灯日6/16)
精きくゆう
(消灯日6/9)
1本目 2本目 3本目 長短差 1本目 2本目 3本目 長短差 1本目 2本目 3本目 長短差 1本目 2本目 3本目 長短差 1本目 2本目 3本目 長短差 1本目 2本目 3本目 長短差
箱摘心A 34 32 26 7.4 37 35 33 3.8 50 48 45 5.1 29 27 25 4.0 42 41 39 3.3 35 33 31 4.5
箱摘心B 34 30 22 10.4 32 29 25 7.4 50 45 38 13.8 29 27 22 5.4 39 36 29 8.5 32 29 26 6.0
慣行 33 31 26 5.3 41 38 36 4.9 55 53 50 4.7 30 28 26 4.4 44 41 37 7.1 38 37 34 4.1
※株毎に側枝長の長い順に1本目、2本目、3本目とし、長短差は株毎の最長側枝長と最短側枝長の差。

 表4 摘心作業の違いによるスプレーギクの消灯日側枝長(6/16調査)(令和5年)
試験区 セイスピカ
(消灯日6/9)
セイスピカ
(消灯日6/16)
セイパレット
(消灯日6/9)
セイマオン
(消灯日6/9)
1本目 2本目 3本目 長短差 1本目 2本目 3本目 長短差 1本目 2本目 3本目 長短差 1本目 2本目 3本目 長短差
箱摘心A 36 35 33 3.3 34 32 29 4.8 35 32 30 4.9 32 30 28 3.3
箱摘心B 32 29 26 6.8 36 35 32 4.8 30 27 4.1 26 23 18 7.7
慣行 37 34 32 4.3 35 34 31 4.4 34 32 29 4.8 34 32 29 4.7
※株毎に側枝長の長い順に1本目、2本目、3本目とし、長短差は株毎の最長側枝長と最短側枝長の差。

 表5 摘心作業の違いによる開花日及び切り花品質(令和5年)
品種名 消灯日 試験区 開花盛期z 切花長 切花重 葉数 茎径y 花蕾数 花房形x
精こまき 6月9日 箱摘心A 8月5日 81.5 30.4 43.0 4.8 8.1 AB
箱摘心B 8月6日 75.3 27.9 40.5 4.6 7.7 AB
慣行 8月4日 77.1 26.4 41.1 4.5 8.0 AB
精はなこ 6月9日 箱摘心A 7月29日 93.7 32.9 44.9 4.4 12.3
箱摘心B 7月27日 81.0 27.7 41.3 4.1 11.8 AB
慣行 7月28日 92.5 33.1 46.9 5.0 12.4
6月16日 箱摘心A 8月1日 97.5 42.5 49.9 4.8 13.5
箱摘心B 7月31日 89.7 38.3 47.4 4.6 13.2 AB
慣行 7月31日 97.9 37.2 50.0 4.5 14.4 AB
精しらあや 6月9日 箱摘心A 7月27日 73.6 31.3 42.4 4.3 14.4
箱摘心B 7月26日 71.0 32.0 41.2 4.2 14.1 AB
慣行 7月27日 74.4 31.3 44.5 4.4 14.7
6月16日 箱摘心A 8月1日 86.1 41.4 48.6 4.7 15.0 AB
箱摘心B 7月31日 78.3 35.9 43.8 4.4 14.2 AB
慣行 8月1日 82.9 37.5 48.4 4.5 15.3 AB
精きくゆう 6月9日 箱摘心A 8月4日 98.6 45.9 35.3 6.5 8.9
箱摘心B 8月3日 92.4 40.8 32.8 4.9 8.2
慣行 8月1日 97.5 44.6 35.7 5.1 9.3
セイスピカ 6月9日 箱摘心A 8月3日 91.7 45.8 38.3 5.9 18.8 AB
箱摘心B 8月4日 89.1 38.4 38.7 4.1 24.3 AB
慣行 8月2日 90.6 41.0 41.2 4.2 26.2 AB
6月16日 箱摘心A 8月5日 92.2 35.1 40.3 3.9 22.3 AB
箱摘心B 8月4日 88.8 36.0 40.5 3.9 21.8 AB
慣行 8月4日 93.7 33.4 40.4 4.4 20.2 AB
セイパレット 6月9日 箱摘心A 8月12日 90.0 49.1 35.4 5.7 6.1
箱摘心B 8月11日 87.1 60.4 34.4 6.2 6.5
慣行 8月12日 89.1 55.3 36.4 5.8 6.8
セイマオン 6月9日 箱摘心A 8月8日 78.1 40.3 32.9 5.3 8.0
箱摘心B 8月9日 73.2 41.3 30.2 5.4 7.3
慣行 8月8日 82.7 48.9 35.0 5.7 8.2
z 50%開花時とした。
y 切り花頂端より1/2下がった位置の長径。
x 円錐形または円筒形(頂花下りも含めた)をA、平形をB、凹型をC、乱形(やなぎ芽)をDとし、個体数の多い順に表した。


 図1 摘心作業の違いによる品種別切り花長の割合(令和5年)
※品種名の後の数字は消灯日

※利用上の留意点
  1. 宮城県名取市での結果であり、耕種概要は表6のとおりです。
  2.  表6 耕種概要(令和5年)
    分類 試験区 挿し芽 定植 摘心 仕立本数
    小ギク 箱摘心A 4/7 5/1 5/1 3本
    箱摘心B 4/7 5/8 5/1 3本
    慣行 4/7 4/25 5/1 3本
    スプレーギク 箱摘心A 4/17 5/9 5/9 3本
    箱摘心B 4/17 5/16 5/9 3本
    慣行 4/17 5/1 5/9 3本
    定植は、株間15cm×条間15cm、5条ネットの中1条抜き4条植えとした。
    基肥として窒素成分量1.5kg/aを施用した。
    電照は、赤色LEDランプ(NAG10CSR5-62E26、(株)エルム、7W)を高さ1.5~1.8m、
    3m間隔に設置し、定植から消灯日(6/9、6/16)まで6時間(22:00~4:00)実施した。
  3. 試験は128穴のセルトレイに用土プロミックスを使用して挿し芽を行ったものです。
  4. 摘心後の側枝の発生には品種間差があります(表1)。
関連情報
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タイトル
出典
容量
R5普及技術
316KB

 宮城県農業・園芸総合研究所
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