試験研究の成果

【食料生産地域再生のための先端技術展開事業】
大麦リビングマルチを利用したキャベツ等のIPM体系

分  野
野菜
品  目
キャベツ,タマネギ
技術概要
 露地園芸では化学合成農薬の代替手段が不足しており,IPMの普及はあまり進んでいません。また,近年では農薬の効果が低下した病原菌(耐性菌)や害虫(抵抗性害虫)が顕在化してきています。
 そこで,露地園芸品目における総合的病害虫管理技術(IPM)の普及,拡大を目指し,リビングマルチを導入したIPM体系を確立しました。

キャベツ
 IPM体系(夏どりキャベツ)
 大麦によるリビングマルチを利用した夏どりキャベツのIPM体系は図1のとおりです。
キャベツ
(夏どり)
4月 5月 6月 7月
上以降
栽培目安 定植 収穫
害虫防除 大麦利用 中耕無 LM
播種
LMによる抑制期間(期間中2~3回刈込) LM
倒伏
座死
中耕有 LM播種
(中耕時)
LMによる抑制期間
(期間中1~2回刈込)
使用手順 【定植前】
灌注処理
剤使用
灌注処理剤残効期間 薬剤防除併用
(チョウ目害虫はBT剤を主体に散布)
黄緑色LED(ヤガ類対策)
交信攪乱剤(コンフューザーV)利用(チョウ目(モンシロチョウ以外))
病害防除 降雨状況に応じ無機銅剤を主体とした殺菌剤散布
(2~3回程度)
無機銅剤を主体とした殺菌剤散布
(概ね10~14日間隔)
 図1 リビングマルチを利用した夏どりキャベツのIPM体系

 IPM体系(冬どりキャベツ)
 大麦によるリビングマルチを利用した冬どりキャベツのIPM体系は図2のとおりです。
キャベツ
(冬どり)
9月 10月 11月 12月
上以降
栽培目安 定植 収穫
害虫防除 大麦利用 中耕無 LM播種 LMによる抑制期間(期間中2~3回刈込) 収穫後LM
撤去(鋤込)
中耕有 LM播種
(中耕時)
LMによる抑制期間(期間中1~2回刈込)
使用手順 【定植前】
灌注処理
剤使用
灌注処理剤残効期間 薬剤防除併用
(チョウ目害虫はBT剤を主体に散布)
黄緑色LED(ヤガ類対策)
交信攪乱剤(コンフューザーV)利用(チョウ目(モンシロチョウ以外))
病害防除 降雨状況に応じ無機銅剤を主体とした殺菌剤散布
(概ね10~14日間隔)
 図2 リビングマルチを利用した冬どりキャベツのIPM体系

 大麦の害虫抑制効果と刈込み時期の目安
 大麦をリビングマルチとして利用することで,モンシロチョウ,ヤガ類(ウワバ類,オオタバコガ),微小害虫(アブラムシ類,ネギアザミウマ)のキャベツへの寄生を概ね1/3~1/2程度に抑制することができます。
 コナガに対しては抑制効果が劣るため,特にコナガの発生が多い圃場では,交信攪乱剤及びBT剤を併用してください。
 また,大麦の生育初期には害虫抑制効果が劣るため,定稙苗の殺虫剤灌注処理と併用してください。
 大麦をリビングマルチとして取り入れた場合には,キャベツへの日射量が抑制されて収穫物が小玉化する場合がありますが,これは大麦の草高がキャベツ草高(畝高含む)を超えないように,大麦を刈り込むことによって回避することができます。
 大麦を刈り込んだ場合でも害虫抑制効果は,刈り込まない場合と同程度認められます。

タマネギ
 IPM体系(春まきタマネギ)
 大麦によるリビングマルチを利用したIPM体系は図1のとおりです。
 リビングマルチは大麦「てまいらず」を通路部分10aに対し10kgの割合で播種し,生育させることによりネギアザミウマの寄生が抑制されます。
 大麦を刈り込んだ場合にも抑制効果は示されます。
タマネギ
(春まき)
4月 5月 6月 7月
栽培目安 定植 収穫
大麦管理 播種 刈込み(タマネギ草高の半分を目安) 倒伏
アザミウマ防除 黒色ポリ
マルチ
大麦による抑制期間
(青色粘着板による
初発生時期の把握)
薬剤防除
必須 防除目安
20頭/株
防除目安
40頭/株
病害防除 降雨状況に応じ無機銅剤を主体とした殺菌剤散布
(2~3回程度)
無機銅剤を主体とした殺菌剤散布
(概ね10~14日間隔)
 図3 リビングマルチを利用した春まきタマネギのIPM体系

 大麦の刈込み時期の目安
 大麦の草高がタマネギの草高の半分程度に達した時点で,畝の高さまで刈り込むことによってタマネギの小玉化は回避することができます。

 大麦利用体系での殺虫剤散布時期
 大麦利用体系ではネギアザミウマの発生初期(5月下旬頃)のプロチオホス乳剤(商品名:トクチオン乳剤)散布が高い効果を示します。
 その後は,発生状況により本虫に高い効果を示す殺虫剤を散布してください。
 殺虫剤の選定には,「アザミウマ類に対する各種薬剤の感受性」も参考にしてください。
関連情報
担当部署
農業・園芸総合研究所 園芸環境部(電話:022-383-8133)

 宮城県農業・園芸総合研究所
  (企画調整部 企画調整チーム)
  〒981-1243 宮城県名取市高舘川上字東金剛寺1
  TEL:022-383-8118
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