試験研究の成果

【産業廃棄物税活用事業】
堆肥の利用拡大に向けた特殊肥料等入り指定混合肥料の作製

分  野
土壌肥料
品  目
水稲、園芸作物
技術概要
 土づくりや化学肥料使用量低減のため家畜由来堆肥の利用促進が必要ですが、耕種農家は「堆肥と施肥の2回散布」「堆肥の容積が大きく保管性・運搬性が劣る」「専用散布機が必要」「化学肥料より成分不安定」などの理由で堆肥利用を敬遠しています。
 平成24年の肥料取締法施行規則等の改正により、以前は禁止されていた堆肥と普通肥料の混合肥料の製造販売が、一定の要件を満たせば可能になり、令和元年の制度改正では、堆肥がより利用しやすい「特殊肥料等入り指定混合肥料」(混合肥料)という新区分が追加されました。
 家畜ふん尿由来堆肥の利用拡大と化学肥料の利用量低減を図るため、堆肥の配合割合を80%以上で取扱やすく成分が安定したペレット状の特殊肥料等入り指定混合肥料を作製しました。
 さらに、県内の有機センター等と連携しながら、肥料製造業者が取組やすいように設備導入費を抑えた既存の製造ラインを活用し、牛ふん主体堆肥と緩効性化学肥料を撹拌混合のみの簡易加工で特殊肥料等入り指定混合肥料を作製しました。

牛ふん主体堆肥の割合が80%以上のペレット肥料の作製
  1. 県内の有機センターやホームセンターで販売している堆肥と化学肥料をツインダイス式造粒機でペレット状に混合・造粒し、耕種農家の多くが所有しているブロードキャスター等でも散布が可能で成分が安定した特殊肥料等入り指定混合肥料を作製できます(図1、表1~3)。

    図1 特殊肥料等入り指定混合肥料のペレット化の工程


    表1 混合肥料の配合割合(R6畜試)
    区名 配合割合(乾物重%)   設計成分(乾物重%)
    原料堆肥 緩効性化学肥料 速効性化学肥料
    混合ペレット区 80 20 100 8.4 2.9 5.4
     ※堆肥はもとよし有機、緩効性化学肥料はハイパーCDU細粒5を使用

    表2 混合肥料の加工後の変化及び保存性(R6畜試)
    区名 製品化率
    (%)
    水分(%)   容積重(kg/L)   ペレット維持率(%)
    原料堆肥 製品 原料堆肥
    A
    製品
    B
    減容率
    C=A/B
    2月後 4月後 6月後
    混合ペレット区 87.0 31.9 26.0 0.37 0.64 57% 99.9 99.9 99.8
     ※製品化率=製品重量(乾燥・放冷後に2mmのふるいを通過しない重量)/投入原材料合計重量
     ※ペレット維持率:試料中2mmのふるいを通過しない重量割合

    表3 混合肥料の保存年数による成分濃度の変化(R4~6農園研)
    区名 保管件数 水分 全炭素 全窒素 CaO NgO Na
    (現物あたり%)
    混合ペレット区 21.1 30.6 6.08 2.25 3.75 2.92 1.24 0.38
    21.9 30.6 6.66 2.09 4.04 2.97 1.23 0.37
    21.8 31.7 6.48 2.26 4.63 2.62 1.35 0.40
     ※混合ペレットはR4年度作成時のもので、二重にしたポリ袋に入れ室内で常温保存した。

  2. 慣行の肥料体系と同程度の収量が得られ、堆肥を多く配合することで窒素肥効が緩やかな肥料を作製できます(表4、図2~4)。
    表4 混合肥料の栽培試験の施肥内容(現物<乾物>kg/10a R4~5農園研)
    作目 区名 施肥量<成分量N-P-KO> 備考(栽培概要)
    基肥 追肥
    エダマメ 混合ペレット区 98.7<6.0-2.2-3.7> 品種:湯あがり娘、条間75×株間20cm
    播種6/2、収穫8/15
    慣行区 40.0<6.0-6.0-6.0>
    タマネギ 混合ペレット区 164.5<10-3.7-6.2> 62.5 品種:ネオアース、条間24×株間12cm
    播種9/6、定植10/27、追肥3/3、収穫6/6
    慣行区 66.7<10-16-10> <10.0-6.3-8.8>
     ※栽培期間中の窒素施肥量が同等になるように慣行栽培(緩効性化学肥料施肥)と比較


    図2 エダマメの可販収量(kg/10a、R4農園研)

    図3 タマネギの可販収量(t/10a、R4~5農園研)



    図4 エダマメ栽培試験における混合ペレットの窒素溶出率(全窒素当たり%)の推移(R4農園研)


  3. 肥料ペレット加工費が1kgあたり50円程度以下なら肥料費が安くなり、化学肥料利用量も低減されます(図5~6)。

    図5 エダマメ・タマネギ栽培試験の肥料費(円/10a、R6畜試)
     ※肥料代はR6秋価格(税込)・ペレット加工費50円/現物kgで試算



    図6 エダマメ・タマネギ栽培試験の化学肥料の施肥量(基肥+追肥kg/10a、慣行区対比%、R6畜試)


※利用上の留意点
  1. 作製した肥料を販売あるいは譲渡する場合は、「特殊肥料等入り指定混合肥料」としての肥料の生産や販売の届出や保証票の表示が必要です。
  2. 原料の水分が高い(35~40%以上)と造粒時に機械の目詰まりやペレットが崩れやすくなるため、製品化率やペレットの維持率の低下を抑制するため、牛ふん堆肥の発酵期間の延長や追加乾燥、水分調整資材を混合するなどの対策を講ずる必要があります。

製造しやすい簡易加工による指定混合肥料の作製
  1. 肥料製造業者が取組やすいように、設備導入費を抑えた既存の製造ラインを活用して、堆肥の配合割合が80%以上で肥効の長い緩効性肥料を撹拌混合のみの簡易加工で特殊肥料等入り指定混合肥料を作製できます(図1)。

    図7 特殊肥料等入り指定混合肥料の簡易加工の工程


  2. 栽培期間中の合計窒素施肥量を同等の慣行の肥料体系では、作製肥料は慣行肥料体系と同程度の収量が得られ、肥料費も化学肥料利用量も低減されます(表1~2、図2~5)。
    表5 混合肥料の配合割合
    区名 配合割合(乾物%) 設計成分(乾物%)
    原料堆肥 緩効性化学肥料 速効性化学肥料 水分
    エコ堆くん(肥料入り) 98.0 1.0 1.0 100 26.1 3.0 4.3 4.7
     ※堆肥:エコ堆くん(加美町土づくりセンターの牛ふん主体堆肥)、緩効性化学肥料:麦パンチ青(セントラル化成(株))、速効性化学肥料:尿素
     ※JA加美よつばでR6春から予約制で試験販売(フレコン500kg袋のみ、1袋5,000円 (税込))

    表6 ブロッコリー栽培試験の概要
    区名 使用肥料名
    (窒素-リン酸-加里%)
    施肥量(現物、kg/10a) 備考
    基肥 追肥1 追肥2
    A混合肥料一発区
    施肥1回
    エコ堆くん(肥料入り)
    (3.0-4.3-4.7)
    1,000
    (21.9)
    1,000
    (21.9)
     ・試験規模:7.8平米/区×3反復
           (条間70cm×株間40cm)
     ・供試品種:サマードーム(サカタ、中早生種)
     ・栽培期間:播種4/5、定植4/30、基肥4/30、
           追肥5/14・6/6、収穫7/10
    B混合肥料+追肥区
    計3回=基肥+追肥2
    エコ堆くん(肥料入り)
    (3.0-4.3-4.7)
    565.1
    (12.0)
    565.1
    (12.0)
    燐硝安加里S604
    (16-10-14)
    31.8
    (5.0)
    31.8
    (5.0)
    63.5
    (10.0)
    C慣行委区
    計3回=基肥+追肥2
    MMB燐加安14号
    (14-14-14)
    85.7
    (12.0)
    85.7
    (12.0)
    燐硝安加里S604
    (16-10-14)
    31.8
    (5.0)
    31.8
    (5.0)
    63.5
    (10.0)
     ※ブロッコリーの栽培期間中の合計窒素施肥量が同等になるように、混合肥料の配合内容や追肥回数の違いによる省力化の試験


    図8 ブロッコリーの草高の推移(cm)

    図9 ブロッコリー栽培試験の可食収量(kg/10a)



    図10 ブロッコリー試験の肥料代(円/10a)

    図11 ブロッコリー試験の化学肥料施肥量(kg/10a)


※利用上の留意点
  1. 作製した肥料を販売あるいは譲渡する場合は、「特殊肥料等入り指定混合肥料」としての肥料の生産や販売の届出や保証票の表示が必要です。
  2. 原料堆肥の水分が高いと混合した化学肥料が保管中に溶出が進みやすくなるので、混合・加工後なるべく早く施用する必要があります。
関連情報
担当部署
畜産試験場      草地飼料部(電話:0229-72-3101(代表))
農業・園芸総合研究所 園芸環境部(電話:022-383-8133)

 宮城県農業・園芸総合研究所
  (企画調整部 企画調整チーム)
  〒981-1243 宮城県名取市高舘川上字東金剛寺1
  TEL:022-383-8118
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