【みやぎ環境税活用事業】
宮城県におけるブロッコリー「ピクセル」の定植晩限
分 野
野菜
品 目
ブロッコリー
技術概要
ブロッコリーは宮城県内では仙南地域が主要な産地であり、国民生活に欠かせない野菜「指定野菜」に令和8年から追加されるため、生産量の向上が求められています。
近年の気候変動、特に夏季高温と秋冬季温暖傾向によって、宮城県内では露地野菜生産の既存の作型が現状の気候と合わなくなってきています。
宮城県内野菜生産量の向上のためには、現状の気候条件に適応する新しい作型、品種、栽培方法が必要です。
そこで夏播きブロッコリーについて、県内における定植晩限を検討しました。
- 所内における品種比較の結果を表1に示します。早生品種「ピクセル」は9月5日の定植で、青果用プロッコリーの一般的な収穫基準である花蕾径12cm以上となり収穫することができます。一方、中早生品種「恵麟」や晩生品種「れいな」は花蕾が肥大せず収穫には至りません。
表1 早生~晩生品種における定植日毎の収穫調査結果
品種 |
早晩性 |
試験年度 |
定植日 |
収穫日 |
調製重量 (g) |
換算収量 (kg/10a) |
花蕾径 (cm) |
12cm<花蕾径 |
ピクセル |
早生 (60日) |
令和4年 |
9月2日 |
12月8日 |
391.5 |
1,723 |
13.0 |
○ |
9月6日 |
12月8日 |
420.7 |
1,851 |
12.3 |
○ |
9月10日 |
12月28日 |
- |
- |
10.4 |
× |
9月14日 |
12月28日 |
- |
- |
7.1 |
× |
令和5年 |
9月5日 |
12月22日 |
413.6 |
1,415 |
12.6 |
○ |
9月7日 |
12月22日 |
- |
- |
9.3 |
× |
9月8日 |
12月26日 |
- |
- |
11.2 |
× |
9月10日 |
12月26日 |
- |
- |
9.7 |
× |
令和6年 |
9月5日 |
11月28日 |
408.7 |
1,658 |
13.9 |
○ |
9月16日 |
- |
- |
- |
8.3 |
× |
恵麟 |
中早生 (75日) |
令和4年 |
9月2日 |
12月28日 |
- |
- |
9.3 |
× |
9月6日 |
12月28日 |
- |
- |
10.9 |
× |
9月10日 |
12月28日 |
- |
- |
6.4 |
× |
9月14日 |
12月28日 |
- |
- |
3.2 |
× |
令和5年 |
9月5日 |
12月26日 |
- |
- |
6.6 |
× |
令和6年 |
9月5日 |
12月24日 |
- |
- |
7.4 |
× |
れいな |
晩生 (110~120日) |
令和4年 |
9月2日 |
12月28日 |
- |
- |
6.9 |
× |
9月6日 |
12月28日 |
- |
- |
5.4 |
× |
注1)調整重量:葉柄が花蕾より内側になるよう切り揃え、茎を頂花蕾から16cmの長さで切断した後の重量
注2)換算収量:調製重量、栽植密度(4,082株/10a)、商品化率(80%を想定)を基に算出
注3)花蕾径が10cmに満たなかった定植日の区は収穫調査を行わなかった
注4)調査株数:令和4年は16株(8株×2反復)、花蕾径が10cmに満たなかったものは8株反復なし、
令和5年と令和6年は30株(10株×3反復)について調査した。
- 早生品種「ピクセル」の定植~出蕾の期間では、高温期の定植ほど有効積算温度が高くなる傾向にありますが、日数は概ね一定で平均して57日です。出蕾~収穫までの期間では、高温期ほど日数が短くなる傾向にありますが、有効積算温度は約200℃・日前後です(表2)。
表2 早生品種「ピクセル」の生育イベントと有効積算温度
品種 |
試験年度 |
定植日 |
出蕾日 |
収穫日 |
定植~出蕾 |
|
出蕾~収穫 |
花蕾径 (cm) |
12cm<花蕾径 |
日数 |
有効積算温度 (℃・日) |
|
日数 |
有効積算温度 (℃・日) |
ピクセル |
令和5年 |
9月5日 |
11月4日 |
12月22日 |
60 |
888.2 |
|
48 |
200.6 |
12.6 |
○ |
9月7日 |
11月5日 |
12月22日 |
59 |
860.2 |
|
47 |
189.4 |
9.3 |
× |
9月8日 |
11月8日 |
12月26日 |
61 |
879.5 |
|
48 |
151.3 |
11.2 |
× |
9月10日 |
11月10日 |
12月26日 |
61 |
851.9 |
|
46 |
134.1 |
9.7 |
× |
令和6年 |
8月2日 |
10月6日 |
10月21日 |
65 |
1,288.7 |
|
15 |
216.8 |
13.5 |
○ |
8月10日 |
10月6日 |
10月21日 |
57 |
1,105.4 |
|
15 |
194.9 |
14.2 |
○ |
8月19日 |
10月9日 |
10月24日 |
51 |
939.2 |
|
15 |
190.0 |
12.6 |
○ |
8月27日 |
10月16日 |
11月7日 |
50 |
850.3 |
|
22 |
247.2 |
12.9 |
○ |
9月5日 |
10月30日 |
11月28日 |
55 |
839.0 |
|
29 |
189.0 |
13.9 |
○ |
9月16日 |
11月12日 |
12月24日 |
57 |
717.2 |
|
42 |
111.7 |
8.3 |
× |
注1)出蕾日:試験区の半数以上の株において、展葉して直径2cm程になった頂花蕾が肉眼で確認できた日とした。
注2)有効積算温度:5℃を発育零点とし、日平均気温から差し引いて積算したもの。マイナスの値は0とした。
注3)調査株数:令和5年と令和6年は30株(10株×3反復)について調査した。
- 早生品種「ピクセル」について、花蕾径12cmを確保できる有効積算温度は、192.2~262.2℃・日と考えられます(図1)。

図1 早生品種「ピクセル」における出蕾以降の有効積算温度と花蕾径の関係
注1)出蕾日:試験区の半数以上の株において、展葉して直径2cm程になった頂花蕾が肉眼で確認できた日とした。
注2)有効積算温度:5℃を発育零点とし、日平均気温から差し引いて積算したもの。マイナスの値は0とした。
注3)調査株数:30株(10株×3反復)について調査した。
- 早生品種「ピクセル」の定植晩限について、宮城県内の各アメダス観測所周辺において有効積算温度からシミュレーションすると、宮城県内の主要産地である仙南地域では8月下旬となります(図2)。

図2 県内各地のアメダス観測所のデータよりシミュレーションしたブロッコリーの定植晩限
注1)各地のアメダス観測所より平成25年~令和5年の日平均気温の平均値を取得し、5℃を発育零点とした有効積算温度を算出した。
ブロッコリーの生育については、定植~出蕾までの期間は57日、出蕾~花蕾径12cmに肥大するまでの期間は有効積算温度にして192.2~262.2(℃・日)要するものとし、定植晩限をシミュレーションした。
※利用上の留意点
- 本試験は宮城県農業・園芸総合研究所内(宮城県名取市)で行いました。栽培期間中(8月~12月)の平均気温(平成25年~令和5年)は15.1℃です。
- 耕種概要は次の通り。
育苗は128穴セルトレイに市販園芸用培度(N-170mg)を充填して1穴に1粒播種し、出芽後は育苗日数にして45日以上かん水のみで管理します(長期無追肥育苗)。
栽植様式は畝幅70cm、株間35cm、マルチなし、栽植密度にして4,082株/10aです。
施肥は全量基肥施肥とし、エコレット208を用いて窒素成分にして14kg/10aを畝内施肥とします。
- 本試験の定植晩限のシミュレーションは平成25年~令和5年の平均値を元に行ったものであり、気温が平年値と大きくずれる年は定植晩限もずれることに留意してください。また、本シミュレーションで算出した定植晩限は気温データのみ参考にして算出しており、降水量、日射量等その他の環境要因の影響は考慮していません。
- 宮城県青果物標準出荷規格では、ブロッコリーの規格は調整後の重量によって分類され、Mサイズは200g~250g、Lサイズは250g~300g、2Lサイズは300g~400gです。今回基準とした花蕾径12cmで「ピクセル」を収穫すると、調製重量はL~2Lサイズに相当します。花蕾径は視覚的に分かりやすい基準であるため、収穫適期の指標として採用しました。
- 本試験で供試した早生品種「ピクセル」は高温により異常花蕾が発生しやすいため、7月中旬~8月上旬の定植には注意してください。
- 本試験の定植日では中生品種「恵麟」は収穫に至りませんでしたが、県内慣行の8月中旬定植であれば栽培可能です。晩生品種「れいな」はヴィルモランみかど(株)の記載では中間地または暖地の夏播き栽培向けであり、本県での夏播き栽培には適しません。
関連情報
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出典
容量
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289KB
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担当部署
農業・園芸総合研究所 野菜部(電話:022-383-8124)