試験研究の成果

キャベツ「初恋」の9月上旬定植秋冬どり栽培

分  野
野菜
品  目
キャベツ
技術概要
 気候変動による夏秋季の高温と秋冬季温暖傾向によって、近年では県内の露地野菜生産における作型が従来のものと乖離しています。このため生産安定を図るためには、現状の気候条件に適応する新しい作型、品種、栽培方法が必要です。
 そこで、夏まき秋冬どりキャベツにおいて、従来の定植時期より遅くしても年内の収穫が可能となる品種を検索したところ、夏秋期の高温、暖冬に対して安定的に栽培が可能な品種と定植晩限を明らかにしました。

  1. 定植日を同日とした長期無追肥育苗、慣行育苗苗の供試品種は、収穫開始日に差はなく、球重にやや差が見られますが、1.0kg以上が確保でき、11月中の収穫が可能です。「初恋」は、供試品種の中で最も早い収穫となります(表1)。
     表1 令和4年8月29日定植が株あたり収量に及ぼす影響 (2022年)
    供試品種 播種日
    (月日)
    育苗
    形態
    定植日
    (月日)
    収穫日
    (月日)
    株あたり
    重量
    (g)
    球(cm) 扁平率
    (%)
    芯(mm) 結球葉枚数
    (1cmまで)
    10aあたり
    換算収量
    (t)
    縦径
    (球高)
    横径
    (球径)
    長さ
    彩音 R4年
    7月11日
    長期
    無追肥
    育苗
    R4年
    8月29日
    R4年
    11月24日
    1,297a 12.8 20.4 62.5 36 55 46.2a 3.6
    冬藍 1,527a 13.4 20.0 67.2 36 65 48.6a 4.2
    おきな 1,762b 12.4 19.0 65.0 31 72 57.0b 4.9
    龍月 R4年
    8月上旬
    慣行
    育苗
    1,430a 12.2 20.2 60.0 34 57 54.2a 3.9
    月光 1,647b 13.7 18.9 72.4 43 70 46.4b 4.5
    初恋 R4年11月4日 1,373a 12.7 20.9 60.6 34 59 54.1a 3.8
    注)英小文字間で5%の有意差あり(Tukey検定)。播種日7月11日の供試品種は長期無追肥育苗、8月上旬播種の供試品種は慣行育苗。
      扁平率は値が高いほど腰高を呈する。10aあたり換算収量は2,785株/10a(ほ場面積(図面)の78%)とした。

  2. 慣行作型である8月22日定植では、供試品種すべてで株あたり重量が1.2kg/株以上となりますが、「冬藍」、「彩音」、「龍月」の収穫日は11/27日、「おきなSP」、「初恋」は11/14日で2週間程早くなります(表2)。

  3. 定植日8月29日は8月22日定植より、供試品種すべてで収穫時の株あたり重量が小さくなり、9月7日、9月11日の定植では「初恋」以外は1.0kg/株を超える品種はありません(表2)。
     表2 8月下旬~9月上旬の異なる定植日がキャベツ株あたり重量および結球葉数におよぼす影響 (2023年)
    定植日
    (月日)
    供試品種 収穫日
    (月日)
    定植から
    収穫まで
    の日数
    (日)
    株あたり
    重量
    (g)
    球の形状(cm) 扁平率
    (%)
    芯の形状(mm) 外葉数
    (枚)
    結球葉数
    (枚)
    備考
    (全葉数)
    縦径 横径 長さ(縦) 幅(横)
    8月22日
    (慣行)
    冬藍 11/27 96 1,815 14.2 20.8 88 68 39 25.0 48.5 (73.5)
    彩音 1,450 13.6 18.4 74 56 38 26.7 45.0 (71.7)
    龍月 1,371 11.8 18.1 65 58 33 23.2 54.8 (78.0)
    おきなSP 11/14 84 1,688 12.3 21.0 59 69 36 21.8 50.2 (72.0)
    初恋 1,821 12.3 21.5 57 63 34 21.0 50.6 (71.6)
    8月29日 冬藍 11/30 93 1,244 13.0 17.1 76 68 37 24.6 47.2 (72.6)
    彩音 1,025 12.0 16.1 75 43 36 25.0 43.8 (69.8)
    龍月 1,074 11.1 16.7 66 48 30 23.4 54.4 (77.8)
    おきなSP 11/27 90 1,603 12.8 20.5 62 77 33 22.3 51.3 (73.7)
    初恋 11/14 77 1,485 12.3 21.2 58 60 33 22.5 49.4 (71.9)
    9月1日 冬藍 11/30 90 1,100 12.5 16.9 74 59 39 26.5 47.4 (75.2)
    彩音 778 24.0 44.0 (68.0)
    龍月 814 27.6 51.6 (79.2)
    おきなSP 1,114 11.5 18.3 63 64 36 22.2 56.6 (78.8)
    初恋 11/14 74 1,316 11.5 20.0 58 50 31 23.2 48.5 (71.7)
    9月7日 冬藍 12/14 98 961 24.6
    おきなSP 904 22.6
    初恋 11/27 81 1,298 11.3 20.1 56 56 31 23.8 49.3 (73.1)
    9月11日 冬藍 12/14 94 667 25.0
    おきなSP 593 23.0
    初恋 11/27 77 1,200 11.3 19.0 59 54 31 22.5 51.0 (73.5)
    9月12日 初恋 11/30 79 1,276 12.0 19.5 62 60 35 21.0 53.0 (74.0)
    別ほ場
    注)各試験区供試品種の育苗形態は、長期無追肥育苗(育苗日数45日以上)とした。
      外葉数は定植時の葉数2.5枚を含む。結球葉数は最小5mmまでの葉数。9月12日定植「初恋」は別ほ場における値。
      株あたり重量1.0kg以下となった供試品種の球内調査は行わない。( )内は全葉数。

  4. 「初恋」は長期無追肥育苗による秋冬どり栽培において、9月11日定植でも11月下旬に球重1.2kg/株程度の株重量を得ることができ、宮城県において慣行秋冬どり栽培の8月下旬とされている定植時期より10日程度遅く定植しても11月末~12月に収穫が可能です(表2)。

  5. 「初恋」を利用した秋冬どり栽培歴


※利用上の留意点
  1. 耕種概要
    • 育苗は長期無追肥育苗、慣行育苗ともセルトレイ128穴使用、培土は市販育苗培土(N-170mg)使用。長期無追肥育苗は育苗日数45日以上とし、発芽後はかん水のみの管理。慣行育苗は、25~30日程度の育苗で発芽後、葉色を見ながら適宜追肥を行う。
    • 栽植様式:畝幅80cm、株間35cm、3,571株/10a、1畝1条、マルチなし。
    • 生産ほ場の施肥総量はN:P:K=24:21:24kg/10a(基肥(N18kg)、追肥(N3kg×2回))
  2. 「冬藍」は25.0~27.8枚で結球が始まり結球葉枚数は47~49枚程度、「彩音」は外葉24.0~26.7枚で結球が始まり43~45枚の結球葉数。「龍月」は23.2~27.6枚で結球が始まり51~54枚の結球葉数、「おきなSP」は外葉数21.8~22.3枚で、結球葉数は50~56枚程度、「初恋」も同様で外葉数21.0~23.2枚で結球が始まり、結球葉数は48~53枚程度でした。
  3. アブラナ科野菜の連作は、根こぶ病の発生が懸念されるので連作は可能な限り避けてください。
関連情報
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